top of page

 近代(明治~現代)

 近代の食生活の始まり 

 近代の食生活のはじまりは外国船の来航と徳川幕府の滅亡によってはじまる。外国船の来航により外国人の接待の料理は饗応料理で従来からの和食だった。不評だった為一部西洋料理(フランス料理)に変わった。条約締結後外国人の居住区ができ、外国人向きのレストラン・パン屋・食肉業者ができた。周辺の日本人は西洋の食文化に触れ、技術を習得していった。これまで仏教の殺生戒ゆえたてまえ上は獣肉食が禁じられていたが、縄文以来何でも食べるという一般人の「雑食の伝統」はいっきに開花し、肉食も浸透していった。食文化は変化しにくいとされるが日本では速やかにかわっていったのである。

 新政府の政策 

 新政府の近代化政策における重要な課題は欧米先進資本主義列強諸国と国際社会において肩を並べる強国を作る富国強兵策であった。国民生活全般においては徴兵制を布き陸軍・海軍で集団給食という新しい形態を作った。戦場食でもある缶詰も盛んに作られる。またお雇い外国人の登用は西洋文化の普及に大きな役割を果たした。食生活の洋風化に不可欠なじゃがいも・タマネギ・トマト等は生産を増大していった。

 家族の新しい形 

 落合恵美子が提起した「近代家族」の中で男は公共領域女は家内領域という性別分業は女性の地位が相対的に向上した。家庭内においても主人の采配は大きかったが女性が家庭の食事や育児に従事することで女性が家庭内で大きな力を持つことになる。
 食卓も以前は個人の箱膳だったが、明治の20年代に発案されたちゃぶ台は、食事を皆で囲むということで家族の意識を変化させた。都市部においては食生活は変化したが、山間部と海岸部・北部と南部・階層差によって異なっていました。農民は一部の地域を除いて米食は稀でさつまいも・麦・雑穀が常食だった。

 料理の和洋折衷 

 料理も和洋折衷が工夫され家庭ではコロッケ・カレーライス・ポークカツレツが人気メニューとなる。街中では西洋料理の技法を用いて日本風にアレンジした洋食という新ジャンルの食堂が登場した。大正時代にはいると雑誌の刊行が盛んになり、家庭用料理関係の本が多く刊行された。外食の習慣が広がり女性も楽しむようになる。これはあくまで都市の上層部の生活風景であって階級や地域による格差は顕著であった。

 戦中戦後の食糧事情 

 太平洋戦争中の食料事情は政府の食料統制によって国民は飢餓状態を強いられ代用食としてサツマイモ・フスマ等を食べることになる。学童の集団疎開や政府の食料政策によって国民は飢えにたえてきたのである。戦後においても日本の飢餓状態は続き米よこせのスローガンをかかげた食料メーデーがおきる。GHQ総司令官マッカーサーは本国に食料の提供を促した結果小麦や大麦の食料支援によって食料がもたらされた。

 高度成長期の食生活 

 日本の高度経済発展は1960年頃に火がついた。経済の成長とともに日本人の
食料摂取状況・栄養状況もよくなり、食生活が飛躍的に進歩した高度成長期の特徴は大量生産・大量流通・大量消費による生産加工技術の革新である。所得が上がりお金で物が買いやすくなる時代になると好きな物を食べる機会が多くなり偏食になった。美食と飽食の時代が現代の食生活のキーワードとなる。

 新しい食生活の推移 

現在の食生活の推移を年代ごとの特色と変換点のポイントとして列挙してみました
  1953年  (昭和28年)  冷凍食品の発売
  1954年  (昭和29年)  学校給食法が発布
  1955年  (昭和30年)  電気自動炊飯器発売
  1958年  (昭和33年)  輸入自由化決定
  1958年  (昭和33年)  インスタントラーメン発売
  1966年  (昭和40年)  家庭用冷凍冷蔵庫の普及
  1970年代           外資系ファミリーレストラン
                    ファーストフード店が開店する
  1974年  (昭和49年)  コンビニエンスストアー1号店ができる
  1975年代          スーパーマーケットが増える
  1980年代          グルメ=美食がトレンドとなる

 中食の発達は「家の外で購入した調理済みの食品を家や職場で食べる」のが増えた。主食としての米食の摂取が減ってパン食の普及が増えた。美食と飽食の時代は生活習慣病を多発させ、肥満も問題となる。伝統的な和食の良さが見直された今日本の食生活はどの方向に行くのだろう。

 年表 

1853年 (嘉永6年)  ぺりーが浦賀に来航
1867年 (慶応3年)  徳川慶喜大政奉還を上奏
1868年 (慶応4年)  戊辰戦争。五ヶ条の御誓文を発す
1873年 (明治6年)  地租改正条例が公布・徴兵制が公布
1877年 (明治10年) 西南戦争
1882年代        自由民権運動が盛んになる。
              政府の弾圧が強まる
1889年 (明治22年) 大日本帝国憲法発布
1941年 (昭和16年) 太平洋戦争はじまる
1945年 (昭和20年) ポッダム宣言受諾
1947年 (昭和22年) 日本国憲法公布
1960年頃(昭和35年頃)高度経済成長時代

bottom of page